#べらぼう【朗読】善玉悪玉「心学早染草」山東京伝〜大河ドラマ〜
心学早染草 山東京伝 黄表紙は理屈臭きを嫌うと言えども
今、その理屈臭きをもて、それを趣向となし、三冊に述べて 幼童(ようごう)に授く
もしその利を得ることあらば、天竺の親分も方便を 懐にして退き、
魯国のおじいも天命を袖にして去るべし。 しからば我が国の姉子なんども「清く潔ぎよし」とし
たまわんや 京傳述 人間に魂というものあり。いかなるものぞと
言うに男の魂は剣なるべし、 また 、姫小松の浄瑠璃、俊寛が言い分を聞けば女の魂は鏡
に極まりたり、 また、芝居の魂は銅に赤き神を張るものなりと。
そんな論は皆脇へ退けておくがよし。 剣と鏡なりというは皆例えなり。また、年代期の
端を見るに魂を知る歌とて「木九からに火三つの の山に土1つ、7つは金と五水りょうあれ」とあれどもこれはこじつけなり 心より他はなきものなり。これを生ける時は精気といい、死す時は魂魄という。また心神とも言うて人間の 大切なるはこれに優るものなし。その魂と
いうものいずこより来るぞと思えば天より 授かるなり。
「俺がなりには絵描きも困るだろう。今日の なりは日本限る天帝だ。他の国へは沙汰なし
沙汰なし」 評判評判評判」
そもそも天上に天帝と申す尊き神、おわしまして 常に茶碗のようなものへ椋の実の皮の
ようなものを水にて解き竹の管を浸たして 魂を吹き出し給ふ。その理方、子供の
弄ぶシャボンのごとし。 吹き出し給ふ時は悉く丸く全き魂なれども、妄念妄想の風に吹かれて中にはいびつになり、或いは三角四角になって飛び行くもあるなり。 爰に江戸日本橋の邊りに目前屋理兵衛という有徳なる 商人ありけるが、 妻身籠りて當る十月目というに出産して
玉のごとくの男子をもうけければ 家内祝詞を述べてさざめきける
「幼きは白き糸のごとく、如何様にも染まる ものなりとはむべなるかな。理兵衛が倅
出生すると等しくかのいびつなる悪魂 皮肉へ分けいらんとするところを天帝現れ
い出給い、悪魂が手をねじ上げたまい 全く丸き良き魂を入れたもう。 これ親理兵衛が常に一心の修め良き故、天帝惠を垂れたもう故なり。されど凡夫の目には 少しも見えざるこそ浅ましけれ。
「ここ構わずと行け」「はあ」「ちょんちょん ちょんちょん」と拍子幕というところなり。 理兵衛は伜を理太郎と呼び育てしが
良き魂日々つき添い守りいければ成長に従い 理発にて行儀良く、
その上器用にて外外の子供とはこと 変わりければ両親掌中の玉のごとくいとおしみ
育てけるにぞ、三つ子の魂100までと末え頼もしく 見えけり。「これは見事だ。俺が子ながら
後世恐るべしだ」「あまり不思議だが誰ぞに 書いてもらいはせぬか」
「本にご器用なお子様でござります」「お師匠 さんがこれからは国づくしを書いてやると
言いなさったよ」「坊はおとっさんやおかっさん が大事だよ。穴一や寳引き
はしねえもんだね」魂後ろに髭撫でている 。「ちっとそうもござるめぇ」
かの悪魂、理太郎が体へ入らんとせしを 天帝にケチをつけられてより、身の置き所
なく早應の体もあらば入らんと思えども 当時は儒佛神の尊き道、仕切りに行われて人
皆悪き心を持たねば立ち入るべきところも なく宙にブラブラしていたりけるが、折もあらば
理太郎が体の良き魂をなきものにして 我々 長く利太郎が皮肉の中を住処にせんと
たくみける おのれおのれが不所存より身を果たしたるものの悪魂
ども中に迷っている。「なんとこの群れで50 番めくろうではないか」「いい体の株を買いたい
もの」「この頃は心学とやらが流行るから おいらが住まいをするようなふらち者の
少ないには困る」己れ己れが不所存より身 を果たしたるものの悪魂ども中に迷って
いる。 こう並んだところは今、丁半でも 始まるようだ。数珠を忘れた百万遍の場も
ある。 今は早や理太郎16歳となりければ元服をさ
せけるに生まれつきもよく良い男となり、 さて 店の商売向きあるまま預けてさせければ型
のごとく律儀者ゆえ朝も早く起き 夕べも遅くいねて随分万事に心を配り検約を元と
して親に孝を尽くし、家来に憐れみをかけ、 算盤を 常に話さず内外を守りければその近辺に
評判の息子となりけり。 「額はぬかぬが良い人柄が悪いぞ」「はい
はい」「よくお似合いなされます」 人の寝たる時は魂が遊びに出るということ
違いなし。理太郎18の年、ある日帳合に疲れて うたたねしける
かの魂日々悪き魂を近づけまじと守りいることゆえ、 少しくたびれて理太郎がうたたねを幸い
そこらへ遊びに出しが例の悪魂は良き折柄と 仲間を語らいきたり、良き魂を縛りおき、
後の体へ入りける。良い気味、良い気味。 えぇ、 残念な。 理太郎はその日うたた寝覚めて、今日は浅草観音へ参詣
せんと志し、 観音へ参り帰らんとせしがつくづく思うよう
我、今までは吉原というところ振り向いて みる気もなかりしが
素見はさして銭にもいらぬことなれば1度 は見ても苦しかるまじと思いウカウカと土手八丁
へ差しかかりける。 これ悪き魂
皮肉に分け入りしゆえなり 「いやいや行こうとは思ったがうちで案じる
であろうか。しかし とてもここまで来たからちょっと見て
いこうか。 ただ帰ろうか」と色々迷って土手を生きつ
戻りつする。これ悪魂の所為なり。 「これさ、そんな決まらぬことを言いっこなしさ。我ら
諸事飲み込んだ。ちと吉原の意気なところを見な。 さあさあ早くきなこもち、きなこもち。
魂曰く俺は追いはぎにあった宿引きという身だ。 うう。しめたぞ。しめたぞ。うう。
そこだえ。そこだえ。おいらが身は人間の車を 引くようだ。
理太郎は悪き魂にいざなわれ吉原へ来たり。 素見物にて帰らんと思いしが中の町の夕景色を
見てよりいよいよ悪魂に気を奪われ、とある 茶屋を頼みて三浦屋のあやしのという女郎
をあげて遊びけるが、たちまち魂天井へ飛んで 帰ることを忘れさらに正気はなかりけり 魂、中に飛んで踊りを踊る
「そっこでせい」「よいよい」「ありゃありゃ」 「ああ、いい匂いがする。岡本の乙女という
匂いだ」🎶「酒に明かさぬ夜半もなし。それが 講じた物狂い」「ああ、面白い面白い。
こんな面白いことを今まで知らずにいたが残念」 かくて床収まり、ほどなく女郎をきたりければ、かの悪魂 どもは女老の手を取りて、理太郎
が帯を解き、肌と肌をぴたりと抱かせまた 理太郎が手を取りて女郎の襟りの下へぐっと
差し込む。この時、理太郎は総身が溶けるようにて。 「合点だ、合点だ」「もっとこっちへお寄りなんし おぉ、冷て」
「うちをかぶったらどうする?するもんだ」 まず今晩はこれっきり。どんどんどん、どどん
。 年久しく理太郎が体を住処として忠義を
尽くしたる良き魂。この度不慮に悪魂が ために戒しめられ理太郎が身の上いかがと
案じけれども誰あって戒しめを解いて くれるものもなければ1人、気を焦る。
ここのところ、忠五郎か伊三郎が獨吟の めりあすあって然るべし。俺は矢口の兵庫が
女房、信仰記の雪姫というものだ。 悪魂は宵から踊りくたびれて女郎の懐へ
入りすやすや寝いると等しく理太郎は 仕切りにうちのことが気にかかり
俺はどうしてここへは来たことぞ、なぜ こんな気にはなったことぞと夢の冷めたる
心地して物も言わず立ち帰らんとせしがこの 騒ぎに悪だましい目を覚まして返してはならじ
と早速理太郎が体へ飛び込みければまた 心変わり
ついに流連ときたりしところへ、かの良き魂 戒しめの縄をようよう引き切り、一散にはせきたり手を
取って連れ帰らんとする。 悪魂は返すまじと引き止める
理太郎を左へ引っかかる時はああいっそ い続けようと思い、右へ引っ張られる時は
いやいや早く帰ろうと言うて廊下を生きつ 帰りつ思案まちまちなり
魂の姿凡夫の目には見えぬ故、茶屋の男は 「消しからぬ身のふりをする客人だ」「お帰り
なんすともいすともしなんな馬鹿らしいよ」 「井戸替えという身だ」「これ、屁をひらっしゃんな」「良いさ、良いさ」 理太郎は元のごとく良き魂また入りける故、
「この間の女郎買のことは夢のような心にて、 思い出すもけがらわしく帳合ばかりしてい
たりしが、かの怪野が所から魂胆の文來たりしを 何心なく開きければまた悪魂、この文の
中へ入りきたり取り憑く 茶屋男「初回からお文の参ると申す
ことは神よりにもないことでござります」 善き魂、文を見せじと気を揉む。理太郎、怪野が手を
尽くしたる魂胆の文を見しよりまたまた心迷い 俺が身上で1年に300や400の金を つこうたとて、さのみ痛みにもならぬこと千年、万年
生きる身ではなし、死ねば銭に6文より他はいらぬものを 今までは無益の検約をしたことぞ。
なんぞ、燭をとって遊ばざると古詩をもって 手前勝手な例えに引き悪年仕切りにきざしける
理太郎悪年刻しければこの時を得て 悪魂良き魂を切り殺し日頃の念を断ちける
「覚悟広げ」「無念無念 悪魂ついに理太郎が皮肉へ分け入り良き魂
の女房2人の男子を追い出しければ3人手 を引き合って年久しく
住み慣れし体を立ちのくこそ哀れなり これより理太郎は大の放蕩者となり4、5日ずつ
流連する。理太郎が番頭迎えに来て奥山もどきで理屈を言う。 左様に御料簡のないお前様では
なかりしが天魔の見入れか、是非もねぇ」 「これさ、そんな野暮を言うな。どんなことがあっても
帰ることは嫌だの鮨だ」女郎も理太郎が あまり長くいる故、神がって言葉を濁す。
ほんにお父さんお母さんがお案じなんすだろうねぇ。 わっちゃあ、どうも帰し申したく
ねえがどうしたもんだろう。 「これからはおいらが世界だ」「ああ、ええざまだ」
魂割竹にて追い出す。「キリキリ立って失しやがれ」 「今に思い知らせん」「悲しや、悲しや」「かか様、いのう」 理太郎はだんだん悪魂増えて女郎買の上に大酒
を飲んで暴れ博打を打ち、騙りをし、 親にも不幸に当たりければついに勘当の身
となり、今は身の置き所さえなきようになり あまつさえ、ある夜、親のうちの土蔵の矢尻を
切る。悪魂ども多く集まり突きまとって色々 悪事を進むる。恐ろしきことなり
慎むべし慎むべし 犬曰く 「山科の隠れ家じゃあねえが昔の旦那、今の
泥、吠えねば私が役目がかけるワンワンワンワン」 「ぶちよ、俺だわ。吠えるな。吠えるな。
荒神様の吠えるな。吠えるなはどうだ?」 理太郎はついに宿なしとなり、なおさら
悪魂増長して、今は盗賊となり人家離れし ところへ出て追い剥ぎをいたしけるこそ、うたてけれ。 しかるにまた、ここに博識秀才仁徳の世に著しき道理
先生と聞こえたる尊き人おはしけるが、ある夜 講釈より帰りがけ、このところにて盗賊に
出会い 兼ねて手に覚えあれば早速ひっとらえ、不憫のことに思い給い、 いかにも教訓して善心に導かんとその罪を
許し同道して宿所へ帰りたもう。 「にっくいやつの」悪魂ども、おのれらが業にて今此の身にしてしまいながら皆々、指差してどっと笑い蹴るぞ、憎らしき。 ここにまた良き魂の女房2人の伜は
いかにもして親の敵を打たんと付け狙えども 悪魂は多く方人ある故、力に及ばず
無念の月日を送りしが本心に帰りし時を得て 難なく本望を遂げければその他の悪魂は皆々
逃げうせけるぞ、心地よき。 「夫の敵、勝負、勝負」
「思い知ったか」「親の敵、観念しろ」理太郎は道理 先生に命を助けられし上、儒、佛、神のたっとき道を聞き、今は前非を悔い、本心に立ち帰る。 「道理のないはわし1人、可愛いと言うてくれ の金も物前の金も今はもう穢らわしや、穢らわしや」 「人間万事大切なるは1つ心なり皆、己が心より
出でて己が身を苦しむる 今の心はすなわち魂じゃここの道理をとくと
合点せねばならぬ」 「ついでにこの本の作者をもきめねばならぬ。
だいぶ不埒じゃそうな」 道理先生ことごとく教訓して後、目前屋の両親
に勘当の詫をし給ひければ両親も大いに 喜び、早速呼び返しければ理太郎これより道を諦め、親に孝を尽くし、眷族を憐れみ大君子とぞなり、 家、富み榮えける これ皆、先生の仁徳なりと世に言いもてはやしける かの良き魂のせがれ、両人は親の後目を継ぎ
長く理太郎が体を住まいとして 母をも育み、怠らず守りけり。 これより魂、居座って、再び
立つことなし。
#大河ドラマ #べらぼう #オーディオブック #横浜流星 #山東京伝
べらぼうの中で山東京傳が書いた黄表紙「心学早染草」を朗読しました
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2025年 日曜20時
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」
【出演者・キャスト一覧】
蔦屋重三郎(横浜流星)
駿河屋市右衛門(高橋克実)
ふじ(飯島直子)
次郎兵衛(中村蒼)
留四郎(水沢林太郎)
唐丸(渡邉斗翔)
花の井 / 五代目瀬川(小芝風花)
松葉屋半左衛門(正名僕蔵)
いね(水野美紀)
うつせみ(小野花梨)
松の井(久保田紗友)
とよしま(珠城りょう)
大文字屋市兵衛(伊藤淳史)
しげ(山村紅葉)
きく(かたせ梨乃)
朝顔(愛希れいか)
ちどり(中島瑠菜)
半次郎(六平直政)
りつ(安達祐実)
扇屋宇右衛門(山路和弘)
志津山(東野絢香)
須原屋市兵衛(里見浩太朗)
鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)
鱗形屋長兵衛(三浦獠太)
藤八(徳井優)
鶴屋喜右衛門(風間俊介)
西村屋与八(西村まさ彦)
小泉忠五郎(芹澤興人)
平賀源内(安田顕)
平秩東作(木村了)
平沢常富 / 朋誠堂喜三二(尾美としのり)
勝川春章(前野朋哉)
北尾重政(橋本淳)
礒田湖龍斎(鉄拳)
小田新之助(井之脇海)
鳥山検校(市原隼人)
徳川家治(眞島秀和)
知保の方(高梨臨)
徳川家基(奥智哉)
一橋治済(生田斗真)
田安賢丸(寺田心)
宝蓮院(花總まり)
高岳(冨永愛)
大崎(映美くらら)
田沼意次(渡辺謙)
田沼意知(宮沢氷魚)
三浦庄司(原田泰造)
松本秀持(吉沢悠)
長谷川平蔵宣以(中村隼人)
松平武元(石坂浩二)
松平康福(相島一之)
佐野政言(矢本悠馬)
喜多川歌麿(染谷将太)
清水重好(落合モトキ)
誰袖(福原遥)
田沼意致(宮尾俊太郎)
てい(橋本愛)
スタッフ
【脚本】森下佳子
【演出 】
大原拓
深川貴志
小谷高義
新田真三
大嶋慧介
【ナレーター】綾瀬はるか
【音楽 】ジョン・グラム
【時代設定】江戸時代中期
【制作統括】
藤並英樹
石村将太
【プロデューサー 】
松田恭典
藤原敬久
積田有希
【製作】NHK
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