「温泉旅行?知りません」SNSで息子家族の隠された生活を発見した72歳の私。半年後、失業した息子が泣きながら「お母さん、助けて」と電話をかけてきました。

お母さん、今時間ある?う。72歳の ちさ子は息子のひ樹からの久しぶりの電話 に驚いた。半年間ほとんど連絡を取ってい なかった息子の声は疲れきっていた。はい 、大丈夫よ。どうしたの?実は相談したい ことがあるんだ。あって話せないかな。 ちさ子の手がじきを握る力を強めた。息子 が自分に助けを求めてくる。半年前の自分 だったらすぐにもちろんと答えていた だろう。しかし今は違った。分かったわ。 明日家においで。電話を切った後、ちさ子 は窓の外を見つめた。夕日が静かに沈んで いく。明日息子に何と言おう。この半年間 で自分が学んだこと、そして決して戻る ことのできない教会戦について。これは 1人の母親が72歳で初めて自分の人生を 歩み始めた物語である。千さ子は台所に 立ち、いつものように息子の鉱物である クリマを作っていた。72歳になった今で も彼女の手は確かで記事を丁寧にこねる 動作に迷いはない。しかし今日はなぜか心 の奥に小さな不安がうまいていた。また 断られるかもしれない。こんな思いが頭を よぎる。最近息子の弘樹への電話は途中で 切られることが多く、嫁のリナは必ず 何かしらの理由をつけて千さ子の誘いを 立っていた。まじが蒸し上がる香りが台所 に漂う。ちさ子は深くため息きをついた。 孫咲稀れに会えるのはもう月に1度あるか ないかになってしまった。7歳の先は 千さ子によくなついていたのに最近は声を 聞くことさえ稀れになった。お母さんの 作る饅じが1番美味しい。さがそう言って 笑顔を見せてくれた日が遠い昔のことの ように感じられる。千さ子はまじを重箱に 詰め、古いছিল色のカーディガンを 羽織った。ひ樹の家までは電車で30分 ほどの距離だが、最近はその道乗りが とても長く感じられる。電車の窓から 流れる風景を眺めながら千さ子は10年前 のことを思い出していた。ひきがリナと 結婚した時、リナはお母さんと呼んでくれ て、ちさ子に料理を教えて欲しいと頼んで きた。あの頃のリナは素直で 可愛らしくさ子も心から息子の選択を喜ん でいた。しかし先が生まれひ樹の会社での 地位が上がり一家の生活レベルが向上する につれてリナの態度は少しずつ変わって いった。最初は些細なことだった。が自散 する手料理を先には添加物を使わない有気 食品しか与えないことにしているんですと 言って遠回しに断ったりの昔ながらの 子育て方法を今はそういうやり方はしない んですよと軽く否定したり駅につき千さ子 は思い足取りで息子の住むマンションに 向かった。高級住宅街に立つその マンションは地さ湖には少し間違いな感じ がしていつも移縮してしまう。 エレベーターで7階に上がり見れた扉の前 に立つ千さ子は1度深呼吸をしてから インターホンを押した。はい。ひ樹の声が 聞こえる。疲れているようだった。ちさ子 です。まじを作ったのでしばらくの間が あって扉が開いた。35歳のひ樹は確かに 疲れているように見えた。目の下にクが でき、髪も少し乱れている。あ、お母さん ありがとう。弘樹は重箱を機械的に 受け取った。ちさ子の目を見ようとしない 。リビングからは大業でテレビの音が 聞こえてくるが誰も見ていないようだった 。お疲れ様。最近お仕事が大変そうね。 うん。 弘樹の返事はもっきない。ちさ子は靴を 脱いでリビングに上がろうとしたが、その 時リナが奥の部屋から現れた。あら、 お母さんいらっしゃい。リナは微笑んで いるが、その笑顔には以前のような温かさ がない。32歳のリナは美しく、いつも 完璧にみを整えている。今日も高価そうな ワンピースを着てアクセサリーもきちんと 身につけている。今日はごめんなさい。先 を友達の誕生日パーティーに送っていか なければならないのであまり長くいられ ないんです。リナの言葉に千さ子の心は 沈んだ。それな嘘であることは薄う 感じ取れたが何も言えない。そうね。 ふさきちゃんは元気?はい。とても元気 です。今着替えをしているところで千さ子 はリビングに座りひ木が入れてくれたお茶 を飲んだ。会話はまず気まずい沈黙が 流れる。テレビの音だけが部屋に響いて いる。そろそろ失礼するわ。ちさ子が 立ち上がった時、奥の部屋から先の声が 聞こえた。おばあちゃんのまじ1番 美味しいんだ。その瞬間さ子の顔がパッと 明るくなった。しかしすぐにリナの声が 響いた。さき早く着替えなさい。遅刻して しまうわ。そしてバタンと扉が閉まる音が した。千さ子は孫の顔を見ることもでき なかった。玄関で靴を吐きながら千さ子は 気づいてしまった。先が自分を避けている のではない。リナが意図的に自分を遠ざけ ているのだ。帰りの電車の中で千さ子の心 は重かった。仮想に移る自分の顔はいつの 間にかこんなに吹けてしまったのだろうか 。白発が増え方もこけている。もしかし たら自分は本当に迷惑な存在になって しまったのかもしれない。家に帰ると1人 分の夕食を作るのもおっくだった。ちさ子 は簡単な味噌汁とご飯だけで夕食を済ませ 早めにベッドに入った。その夜ちさ子は 眠れなかった。ひがまだ小さかった頃の ことを思い出していた。彼は母親思いの 優しい子だった。学校から帰ってくると 必ずただいまお母さんと言って父さ子を 探した。病気の時は父さ子にだけ甘えて お母さんがいてくれてよかったと言って くれた。あの優しいひ樹はどこに行って しまったのだろうか。それとも自分が 変わってしまったのだろうか。朝さ子は 思い気持ちで目を覚ました。いつものよう に朝食を作り、庭の花に水をやり、洗濯物 を干した。しかし心の奥の不安は消え なかった。昼過ぎ近所のスーパーに買い物 に行く途中でちさ子は偶然以前ひき一家の 近所に住んでいた田中さんにあった。あら 千さ子さんお久しぶり。田中さんは 人夏っこい笑顔で手を振った。70歳を 少し過ぎたくらいの改活な女性だ。田中 さん、こんにちは。この前ひきさん一家と 温泉旅行に行かれたそうですね。リナ ちゃんがとても素敵な写真をSNSに たくさん載せていて楽しそうでした。家族 旅行っていいですよね。田中さんの言葉に ちさ子は息が止まった。温泉旅行をそんな 話は1度も聞いたことがない。え、あの、 さきちゃんも浴衣姿がとても可愛くて、 リナちゃんのお母さんも一緒だったんです よね。3世代での旅行素敵だなと思ってみ ていました。ちさ子は何も答えられなかっ た。田中さんはちさ子の様子に気づかない まましばらくもない話をして去っていった 。1人になった千さ子はその場に 立ち尽くした。車の音、人の話し声、全て が遠くに聞こえる。胸の奥が締めつけ られるような痛みを感じた。家に帰った 千さ子は初めてインターネットというもの に興味を持った。近所に住む60代の山田 さんが時々スマートフォンで孫の写真を 見せてくれることを思い出した。もしかし たら私も見ることができるのかもしれない 。千さ子にはスマートフォンの使い方が 分からなかった。しかしどうしても確かめ たかった。次の日勇気を出して山田さんに 相談してみることにした。山田さんお 忙しいところすみません。あの インターネットデリナの写真を見る方法を 教えていただけませんか?山田さんは ちさ子の深刻な表情を見て心よく引き受け てくれた。ちさ子さんどうされました? 何かあったんですか?ちさ子は事情を説明 した。山田さんは同場的に頷き、自分の スマートフォンを使ってリナのSNS アカウントを探してくれた。見つかりまし た。リナさんのアカウントですね。ちさ子 は山田さんの片越しに画面を見つめた。 そこには確かに田中さんが言った通りの 写真があった。ひ樹、リナ、咲の両親が 温泉地で楽しそうに映っている。いつの 写真でしょうか?えっと、2週間前ですね 。2週間前。千さこがり何電話をして みんなでお寿司を食べに行きませんかと 誘った時、リナはひ樹が忙しくてとても 外食どころではないんですと断った日の 直後だった。山田さんは千さ子の表情を見 て何も言わずに画面をスクロールしてくれ た。そこには千さ子の知らない世界が 広がっていた。みの友人たちとの華やかな ランチ会、高級レストランでの食事、 ブランドバッグや洋服の写真、そして 何よりさっきと一緒に楽しそうに過ごす 様子の写真がたくさんあった。公園で遊ぶ 先、遊園地ではしゃぐ先、リナの実家で 祖父母と過ごす先、ちさ子は気づいた。 自分が排除されているのは1日や2日の話 ではない。みなは長い間計画的にちさ子を 家族の輪から除外してきたのだ。ちさ子 さん大丈夫ですか?山田さんの心配そうな 声でちさ子はぎ返った。あ、はい。 ありがとうございました。ちさ子は山田 さんにお礼を言って家に帰った。家に着い てからちさ子は今に座り込み長い間動け なかった。怒りは湧いてこなかった。ただ 深い悲しみと虚しさだけが心を満たした。 これまで自分が必死に気づこうとしてきた 家族との関係は幻想だったのかもしれない 。夕日が部屋に差し込み長い影を作った。 ちさ子はその中で小さくなったように座っ ていた。その夜さ子は1つの決意を固めた 。もう追いかけるのはやめよう。自分にも 残された人生がある。これ以上誰かに必要 とされることを期待するのではなく、自分 自身のために生きることを始めなければ ならない。翌朝、ちさ子はいつもより少し 早く起きた。庭に出て秋の空を見上げた。 空は高く雲がゆっくりと流れている。さあ 、今日から新しい始まりね。ちさ子は 小さく呟いた。72年生きてきて、今更 何かを始めるのは遅すぎるかもしれない。 しかし、残りの人生を誰かの顔色を見 ながら過ごすのはもっと悲しいことだった 。それから数週間が過ぎた。千さ子は ひ樹木に連絡を取ることをやめた。毎週の ように電話をかける習慣も手作りの料理を 自賛することもやめた。最初は寂しさを 感じたが、同時に不思議な解放感もあった 。ある日の後、ちさ子は近所の商店街を 歩いていた。以前よくひき一家と一緒に来 た場所だ。魚屋の前で立ち止まると天手の 佐藤さんが気づいて声をかけてくれた。 ちさ子さん、お久しぶり。最近息子さん 一家と来ませんね。ええ、みんな忙しくて 。ちさ子はそう答えながら嘘をついている 自分に気づいた。本当のことを言う勇気が まだなかった。そうですか。でもリナさん はお元気そうでしたよ。先週さきちゃんと 一緒に来られて大きなタを買って行かれ ました。今度主人の両親が遊びに来るので 手をおっしゃってました。ちさ子の手が 止まった。ひ樹の両親といえば自分と 亡くなった夫のことだ。しかしちさ子は何 の連絡も受けていない。あ、あの立派な体 できっと豪華な食事になったでしょうね。 家族みんなで集まるっていことですよね。 佐藤さんは悪気なく話を続けたが、ちさ子 はもう聞いていられなかった。適当に愛槌 を打ってその場を後にした。家に帰る途中 ちさ子はベンチに座り込んだ。リナは佐藤 さんに嘘ついたのだろうか。それとも本当 に誰か他の両親を招待したのだろうか。 いずれにしてもちさ子はその両親ではない ことは確かだった。その日から千さ子は町 を歩いていてもいつも誰かに監視されて いるような気分になった。知り合いに会う たびに自分の知らない広き一家の生活の 断片を聞かされるのではないかと恐れる ようになった。しかし当時に千さ子は1つ の事実に気づいていた。自分がいなくても 広き一家の生活は何も変わらず続いている ということだ。むしろ自分がいない方が彼 らには壺都合が良いのかもしれない。ある 雨の日、千さ子は家の中で古いアルバムを 整理していた。ひの小さい頃の写真、結婚 式の写真、さが生まれた時の写真、どの 写真も今となっては遠い過去のもののよう に感じられた。さっきの1歳の誕生日の 写真があった。ちさ子が手作りしたケーキ の前でみんなが笑っている。あの時のリナ はお母さんの手作りケーキ本当に美味しい です。さっきも喜んでいますと心から感謝 してくれた。あれから6年何がこんなにも 変わってしまったのだろうか。ちさ子は 写真をアルバムに戻し深いため息をついた 。考えても仕方のないことだった。今更 過去に戻ることはできない。翌日千さ子は 決心した。もう1度だけ山田さんにお願い してリナのSNSを見せてもらおう。もし かしたら何かのきっかけで関係を修復 できるかもしれない。そんな淡い期待を 抱いていた山田さん、またお時間を いただけませんか?もちろんです。ちさ子 さん、少しお痩せになったのではありませ んか?心配です。山田さんは優しい人だっ た。ちさ子の事情を選索することなく黙っ てスマートフォンを操作してくれた。画面 に現れたのは千さ子にとってさらに衝撃的 な内容だった。先週末、リナは友人たちと 高級ホテルでアフタヌウンティを楽しんで いた。その前の週はさっきと一緒に ディズニーランドに行っていた。そして リナの実家での家族欄の写真も頻繁に更新 されていた。特に印象的だったのはリナの 母親と先が一緒に料理をしている写真だっ た。キャプションにはおばあちゃんと一緒 にクッキー作りさも上手になりましたと 書いてある。しさ子は胸が締めつけられた 。自分もかつてさと一緒にクッキーを作っ たことがある。咲は小麦粉を顔につけ ながらおばあちゃん楽しいねと言ってくれ た。しかし今その役割は完全にリナの母親 にとって変わられていた。ちさ子さん山田 さんの心配そうな声が聞こえたがちさ子は もう画面を見ていられなかった。 ありがとうございました。もう十分です。 子は立ち上がった。山田さんは何か 言いかけたが、ちさ子の欠然とした表情を 見て黙って頷いた。家に帰った千さ子は 台所に立った。夕食の準備をしながら自分 の現状を冷静に整理してみた。息子のひ樹 は自分を避けている。嫁のリナは計画的に 自分を排除している。魔先は自分のことを 忘れているかもしれない。そして彼らの 生活は自分がいなくても何の支障もなく 続いている。これが現実だった。受け入れ がいが確実な現実だった。その夜さ子は 久しぶりにゆっくりと湯舟に使った。 温かいに体を委ねながら考えた。自分は これまで家族のために生きてきた。夫が 亡くなってからは息子の家族が全てだった 。しかしその息子の家族はもう自分を必要 としていない。それなら今度は自分のため に生きればいい。千さ子は小さくつぶやい た。72歳の今から新しい生活を始めるの は簡単ではないだろう。しかし残りの人生 を誰かに拒絶される恐怖に怯えながら 過ごすよりはよほど意味のあることでは ないだろうか。湯舟から上がり、ちさ子は 鏡に移る自分の顔をじっと見つめた。確か に置いている。シも増え、髪も白くなった 。しかしまだ諦めるには早すぎる。この顔 にもまだ生きている証がある。翌朝子は 近所の公民館で配布されている。サークル 活動の案内を取りに行った。以前から興味 のあったウォーキングクラブが毎週火曜日 と金曜日の朝に活動していることを知った 。高齢者の健康作りを目的とした無理の ない楽しいウォーキングです。初心者大 歓迎一緒に歩きませんか?パンフレットに はそう書いてあった。千さ子は長い間迷っ た。新しい環境に飛び込むのは勇気が言っ た。しかしこのままではいけないという 気持ちの方が強かった。今度の火曜日から 参加させていただきたいのですが、ちさ子 は公民館の受付で申し込みをした。受付の 若い女性は親切に説明してくれた。皆さん とても優しい方ばかりですよ。ちさ子さん も楽しく参加していただけると思います。 家に帰ったちさ子は久しぶりに軽やかな 気持ちになった。不安もあったが期待の方 が大きかった。長い間誰かの顔色を見 ながら生きてきた。今度は自分の意思で 選択した道を歩んでみよう。火曜日の朝、 千さ子は少し早めに公民館に向かった。 集合場所にはすでに10数人の中高年の 男女が集まっていた。みんな動きやすい 服装で表情も明るい。初めての方ですね。 私は代表のよえです。よろしくお願いし ます。60代後半と思われる女性が千さ子 に声をかけてくれた。よしえという名前の 女性は背筋がちゃんと伸びてとても元気 そうだった。ちさ子と申します。よろしく お願いします。ちさ子さんはどちらにお 住まいですか?駅の向こう側の住宅街です 。あら、私と同じ方向ですね。今度一緒に 帰りましょう。よしえさんの自然な優しさ に千さ子は心が温かくなった。久しぶりに 誰かと自然な会話をした気がした。 ウォーキングは公園の集会コースを歩く ゆったりとしたペースのものだった。参加 者たちは歩きながら自然に会話をかわして いた。ちさ子さんはお1人住まいですか? 隣を歩く70歳ぐらいの男性が訪ねた。 はい。夫をなくして5年になります。そう ですか。私も3年前にか内をなくしました 。1人だとどうしても運動不足になって しまって、そんな風に自然な会話が続いた 。誰も千さ子のプライベートを選索する ことなくでも暖かく受け入れてくれた。 フォーキングが終わった後、何人かの参加 者が近くの喫茶店でお茶をすることになっ た。ちさ子も誘われて参加した。ちさ子 さんはお子さんはいらっしゃいますか? よしえさんが尋ねた息子が1人います。お 嫁さんと孫がいるのですが、ちさ子は言葉 に詰まった。どう説明していいか分から なかった。あら、それは良いことですね。 よしえさんはちさ子の複雑な表情を見て それ以上は尋ねなかった。代わりに自分の 話をしてくれた。私にも息子が2人いるん です。もそれぞれ家庭があってなかなか 会えなくて寂しい時もありますがそれが 自然なことなのでしょうね。よしえさんの 言葉にちさ子は少し救われた気持ちになっ た。自分だけが特別な状況にあるわけでは ないのかもしれない。子供が自立していく のは親として嬉しいことでもあるけれど 寂しいのも確かですよね。別の女性も同調 してくれた。だからこそ私たちは私たちの 楽しみを見つけないといけませんね。 そんな会話をかわしながらちさ子は久し ぶりに心からリラックスした時間を過ごす ことができた。家に帰った千さ子はその日 1日を振り返った。朝の不安はどこかに 消え、代わりに小さな充実感が心に残って いた。悪くない1日だったわ。ちさ子は鏡 の前で呟いた。鏡に映る自分の顔も朝より 少し明るく見えた。次の金曜日もちさ子は ウォーキングクラブに参加した。今度は よしえさんと一緒に帰ることになった。 ちさ子さんよかったら今度の日曜日一緒に 買い物に行きませんか?新しくできた ショッピングモールを見てみたくてよえ さんの提案にちさ子は嬉しくなった。はい 。是非お願いします。日曜日2人は一緒に ショッピングモールに出かけた。最新の 設備に少し戸惑いながらもよえさんと一緒 だと楽しく過ごすことができた。カフェで 休憩している時、よしえさんが口を開いた 。ちさ子さん、実は私も息子たちとは少し 距離があるんです。ちさ子は驚いてよえ さんを見つめた。長男の嫁が私のことを あまりよく思ってないみたいで、最初は気 にしないようにしていたのですが、 だんだん合いづらくなってしまって、 よしえさんの言葉は千さ子の状況とよく似 ていた。でも今は諦めがついたというか、 息子には息子の生活があるし、私には私の 生活があるということが分かったんです。 私も最近同じようなことを考えていました 。ちさ子は初めて自分の状況を誰かに話す ことができた。よしえさんは黙って聞いて くれた。辛いですよね。でもちさ子さんは まだまだ若いし、これから新しいことを たくさん経験できますよ。よしえさんの 言葉に千さ子は涙が出走になった。誰かに 理解してもらえることの嬉しさを久しぶり に感じた。よしえさんは今幸せですか? よしえさんは少し考えてから答えた。幸せ です。前とは違う種類の幸せですが確実に 幸せです。自分の時間を自分のために使え るってこんなに気持ちの良いことなんだと 気づきました。千さ子はその言葉を深く心 に刻んだ。それから2週間ほど経ったある 日、千さ子と義えさんは一緒に地域の ボランティア活動に参加することになった 。特許老人への廃食サービスだった。週末 だけですが、お弁当を作って配達するお 手伝いをしませんか?ウォーキングクラブ でよえさんが想提案してくれた時、ちさ子 は迷わず賛成した。誰かの役に立てること に久しぶりに意味を感じたからだった。 土曜日の朝、ちさ子と義えさんは地域の 調理施設に向かった。そこでは10数人の ボランティアがすでに活動を始めていた。 新しい方ですね。ありがとうございます。 リーダーの中年女性が温かく迎えてくれた ちさ子と義えさんは野菜の下ごを担当する ことになった。ちさ子さん、包丁使いがお 上手ですね。隣で作業していた女性が関心 していった。ありがとうございます。長年 家族のために料理をしてきたので、ちさ子 は自然に答えた。家族のために培った技術 が今度は知らない誰かのために役立って いる。それが不思議で同時に嬉しかった。 お弁当が出来上がると何人かの ボランティアが配達に出かけた。ちさ子と 義えさんも配達担当になった。最初に訪れ たのは80代の1人まいの男性だった。足 が不自由でなかなか外出できないという。 いつもありがとうございます。男性は深ぶ と頭を下げた。千さ子は胸が温かくなった 。お体に気をつけてください。そう言って 手を振る男性の姿を見て千さ子は自分も誰 かに必要とされていることを実感した。2 件目は90歳の女性だった。 認知症が少し進んでいるらしく、毎回同じ 話を繰り返すが、人夏つっこい笑顔が印象 的だった。あら、今日は2人も来て くださってお嬢さんたちありがとう。その 女性は千さ子と義えさんをお嬢さんと呼ん だ。70歳を過ぎてお嬢さんと呼ばれる ことの照れ臭さと嬉しさをちさ子は味わっ た。配達を終えて帰る道すらよえさんが 言った。良い活動ですね。私たちも楽しい しお役に立てているし。本当にそうですね 。今度は週に2回参加させてもらおう かしら。ちさ子の言葉によえさんは嬉し そうに頷いた。一緒に続けましょう。 きっともっと多くの方のお役に立てますよ 。家に帰った千さ子は久しぶりに充実感で いっぱいだった。誰かに感謝されることの 喜び、役に立てることの意味を再発見した 1日だった。その日の夜、ちさ子は日記を 書き始めた。長い間中断していた習慣を 再開することにしたのだ。今日は廃食 ボランティアに参加した。80代の田村 さんは戦争の話をたくさんしてくれた。 90歳の鈴木さんは毎回同じ話を繰り返す けれどとても愛しい。みんな私より年上な のに私の方が元気をもらっている。不思議 だ聞きながら千さ子は気づいた。最近広き 一家のことを考える時間が確実に減って いる。寂しさは完全になくなったわけでは ないが、それを埋める新しい充実感が 生まれていた。翌のウォーキングクラブで ちさ子は他の参加者たちとも親しくなった 。75歳の安田さんは元教師でいつも 面白い話をしてくれる。68歳の佐々木 さんはさっきと同じような年頃の孫がいて 、時々孫の話を聞かせてくれた。うちの孫 も7歳なんです。最近修字を始めたんです よ。佐々木さんの話を聞きながらちさ子は 先のことを思い出した。しかし以前のよう な胸の締め付けは感じなかった。代わりに 先も元気に成長しているでしょうねという 穏やかな気持ちが湧いてきた。お孫さんと はよく合われるんですか?千さ子が尋ねる と佐々木さんは少し複雑な表情を見せた。 月に1度ぐらいでしょうか。息子夫婦も 忙しいですからあまり頻繁にはそれぐらい がお互いにとって良いのかもしれませんね 。ちさ子の言葉に佐々木さんはアンドした ような表情を見せた。そうですね。距離感 って大切ですよね。そんな会話をかわし ながら千さ子は自分の気持ちが少しずつ 整理されていくのを感じた。ウォーキング クラブに参加して1ヶ月が過ぎた頃、 ちさ子の生活は大きく変わっていた。 火曜日と金曜日の朝はウォーキング、 土曜日は配食ボランティア、日曜日はよえ さんと一緒に買い物や映画鑑賞。平日も 時々メンバーの誰かとお茶をするように なった。ちさ子さん、最近とても元気そう ですね。近所のスーパーであった田中さん に言われて千さ子は帰った。確かに最近鏡 を見るのが苦痛ではなくなっていた。 ありがとうございます。新しい友達ができ たんです。ちさ子は素直に答えた。田中 さんは嬉しそうに微笑んだ。それは 素晴らしいことですね。友達がいるって 本当に大切ですよね。家に帰った千さ子は 改めて自分の変化を実感した。朝起きるの が楽しみになり、新しい1日に期待を 持てるようになっていた。特によえさんと の友情は千さ子にとって大きな支えとなっ ていた。よしえさんはちさ子より5歳年下 だったが人生経験が豊富でいつも的確な アドバイスをくれた。しさ子さん、今度の 連休温泉旅行に行きませんか?ある日、 よしえさんがそう提案してくれた。本線 旅行ですか?ちさ子は驚いた。1人で旅行 したことはあったが、友達と一緒に旅行 するのは結婚前以来のことだった。 ウォーキングクラブの何人かで計画して いるんです。1泊2日の気軽な旅行です。 結局作を含めて6人の女性で温泉旅行に 行くことになった。みんな60代後半から 70代前半の女性たちでそれぞれに人生の 重みを背負いながらも今を楽しもうとする 前向きさがあった。旅行当日千さ子は久し ぶりに旅行カを準備した。新しい服を買い 化粧品も少し良いものを選んだ。鏡に映る 自分が少し若かしく見えるような気がした 。温泉旅館に着くと女性たちは少女のよう にはしゃいだ。わあ、素敵な部屋。お風呂 も高層、夕食が楽しみ。みんなの明るい声 に千さ子も自然に笑顔になった。夕食の 時間6人で囲む食卓は賑やかだった。 それぞれが自分の人生について語り、時に は笑い、時には真剣な表情で聞きった。私 実は3年前まで娘夫婦と同居してたんです 。安田さんが話し始めた。でもやっぱり 難しくて最初は寂しかったけれど今は 1人暮らしの方が気楽で良いです。わかり ます。別の女性も同調した。私も息子夫婦 との距離感に悩んだ時期がありました。で も今は月に1度会う程度でお互いに良い 関係が保てています。しさ子は黙って聞い ていた。みんな似たような経験を持って いるのだと知って不思議なアンド感を覚え た。ちさ子さんはいかがですか?よしえ さんに聞かれてちさ子は少し考えてから 答えた。私も息子夫婦とは少し距離ができ ました。最初はとてもから辛かったのです が最近はこれで良いのかもしれないと思う ようになりました。そうですね。子供には 子供の人生がありますからね。安田さんが 頷いた。私たちには私たちの人生があり ます。よしえさんの言葉にみんなが同意し た。ちさ子も深く頷いた。その夜温泉に 浸りながらちさ子は考えた。半年前の自分 だったらこの旅行を心から楽しむことは できなかっただろう。いつもひき一家の ことが頭から離れず罪悪感や寂しさに支配 されていた。しかし今は違う。確かに寂し さが完全になくなったわけではないが、 それ以上に新しい楽しみや充実感が心を 満たしている。これが私の新しい人生なの ね。千さ子は小さく呟いた。湯の温かさが 体の芯まで届いて心も軽やかになった。 翌日、一向は近くの名所を観光した。お 土産屋さんでちさ子は先へのお土産を手に 取りかけてやめた。今の状況ではお土産を 渡す機会もないだろう。代わりにちさ子は 自分のためのお土産を買った。可愛らしい 手ぬいと地元のメ下だった。自分のための お土産ってなんだか新鮮ですね。ちさ子が つくとよしえさんが笑った。私もそうです 。昔はいつも家族のことばかり考えて 買い物していました。今は自分が何を 欲しいかちゃんと考えるようになりました 。2人の会話を聞いて他の女性たちも同調 した。みんな似たような変化を経験してい たのだった。旅行から帰った千さ子は満足 感に包まれていた。楽しい思い出が たくさんできたし、新しい友情も深まった 。により自分にもこんなに楽しい時間を 過ごす能力があったことを再発見できた。 旅行の写真を整理しながら千さ子は気づい た。写真の中の自分は確実に明るい表情を している。半年前のお苦しい表情とは別人 のようだった。その日の夜さ子は久しぶり にひ樹のことを考えた。今息子は元気にし ているだろうか。は学校で楽しく過ごして いるだろうか。しかし以前のような胸の 痛みはなかった。代わりに元気でいて くれればそれでいいという穏やかな気持ち があった。翌のウォーキングクラブで ちさ子は旅行の話をした。参加できなかっ たメンバーたちもちさ子たちの楽しそうな 様子を喜んでくれた。今度は私たちも参加 したいわ。次はもう少し遠くに行きません か?そんな話で盛り上がった千さ子は こんなに多くの人に囲まれて笑っている 自分が半年前には想像できなかった。廃食 ボランティアも続けていた。特許老人の 方々との交流も深まりちさ子は毎回楽しみ にしていた。ちさ子さんのお弁当いつも 美味しいです。80代の田村さんは毎回 同じことを言ってくれた。しかし千さ子に はその言葉が新鮮に聞こえた。誰かに感謝 されることの喜びを改めて実感していた。 ある土曜日、いつものように配達に回って いると90歳の鈴木さんが珍しく落ち込ん でいた。どうされましたか?ちさ子が心配 して尋ねると鈴木さんは小さな声で答えた 。息子が来るはずだったのに急に来られ なくなったって連絡があって、鈴木さんの 寂しそうな表情を見てちさ子は胸がいたん だ。以前の自分と重なって見えたからだっ た。でもきっとお忙しいんでしょうね。 今度時間ができたら必ず来てくれますよ。 ちさ子は優しく声をかけた。そうですね。 ありがとう、お嬢さん。鈴木さんは少し 笑顔を見せてくれた。その笑顔を見て 千さ子は気づいた。自分も誰かを慰める ことができるようになっていた。以前の 父さ子だったら鈴木さんの状況に自分を 重ねて一緒に落ち込んでしまっただろう。 しかし今は客観的に状況を見て相手を 励ますことができる。自分自身が癒された から他を癒すことができるようになったの かもしれない。その日の夜ちさ子は日記に こう書いた。今日鈴木さんを慰めながら 自分の成長を感じた。半年前の私だったら きっと一緒に泣いていただろう。でも今は 違う視点から物事を見ることができる。 これも新しい友達たちのおかげかもしれ ない。11月に入り木々が色づき始めた。 千さ子は新しい季節の訪れを心から 楽しめるようになっていた。ウォーキング クラブでは紅葉を見に行く計画が立てられ た。今度は日帰りバス旅行だった。ちさ子 さん一緒に座りましょう。よしえさんに 誘われてちさ子はバスの窓際の席に座った 。バスが動き出すと外の景色が流れ始めた 。良い天気ですね。本当に紅葉も綺麗 でしょうね。そんな会話をかわしながら ちさ子は心の軽やかさを実感していた。 誰かと一緒に出かけることの楽しさ、 新しい場所に行くことの期待感。全てが 新鮮だった。目的地に着くと山々山々は 見事に色づいていた。赤や王食の歯が太陽 の光に輝いてまるで絵画のような美しさ だった。わあ、綺麗。みんなが完成をあげ た。ちさ子も思わず声が出た。こんなに 綺麗な紅葉を久しぶりに見ました。隣にい た安田さん千さ子が言うと安田さんは微園 だ。1人で見るのも良いけれどみんなで 見ると感動も倍になりますね。その通り だった。美しいものを誰かと共有すること の喜びをちさ子は改めて感じた。三郎を 歩きながら千さ子は立ち止まって深呼吸を した。住んだ空気が肺に入り心も清らかに なるような気がした。しさ子さんとても 良い表情をしていますね。よしえさんが声 をかけてくれた。そうですか。とても 気持ちが良くて半年前に初めてお会いした 時とまるで別人のようです。よしえさんの 言葉にちさ子は驚いた。そんなに変わり ましたか?はい。あの時はとても悲しそう な表情をしていらっしゃいました。でも今 は心から楽しんでいる様子が伝わってき ます。千さ子は胸が温かくなった。自分の 変化を認めてくれる友達がいることが こんなに嬉しいものだとは思わなかった。 バス旅行から帰った夜さ子は鏡の前に立っ た。確かに表情が変わっている。目に正規 があり、口元も自然に上がっている。 こんな顔もできるのね。千さ子は鏡の中の 自分に微笑みかけた。その頃さ子は気づい ていなかったが、弘樹の生活には少しずつ 安運が立ち込め始めていた。千さ子が 新しい生活を楽しんでいる間、弘樹の状況 は徐々に悪化していた。会社での立場が 微妙になり、家庭でも妻のリナとの関係が ギシ始めていた。ひ樹は営業部で中間管理 職の立場にあったが、最近は部下のミスの 責任を取らされることが多くなった。売上 も思うように伸びず、上司からの プレッシャーは日に日々に強くなっていた 。弘樹君、君の部署の数字が看ばしくない ね。部長の厳しい言葉がひ樹の心を重くし た。申し訳ありません。来月は必ず改善し ます。そう答えながらひ樹木は内心焦って いた。市場の環境が厳しくどの部署も苦戦 している。それなのになぜ自分の部署だけ がこんなに責められるのだろうか。家に 帰っても安らぎはなかった。リナは相 変わらず高級ブランドの服やカを欲しがり 、友人たちとの豪華なランチ会に頻繁に 参加していた。今度友達と軽井沢に旅行に 行くの。素敵なホテルを予約したからリナ の言葉にひ樹は眉を潜めた。今月はもう 予算がきついんだ。少し控えめにして もらえないかな?なんそれ?友達はみんな そのくらいの旅行は普通にしているわよ。 あなただって昔はもっと稼いでいたじゃ ない。リナの言葉がひ樹の心に刺さった。 確かに結婚当初の弘樹はもっと順調だった 。しかし経済状況も変わり競争も激しく なった。昔と同じようにはいかない。でも 現実的に考えないと。現実的って何よ?私 だって友達の前で恥を書きたくないの。 リナの声は次第に高くなった。さが心配 そうに2人を見ているのに気づいてひ樹は 口をつぐんだ。その夜ひ樹は1人で リビングに座っていた。テレビをつけて いるが、内容は頭に入ってこない。ただ お苦しい気持ちが胸を占めていた。 お父さん大丈夫?咲が心配そうに声をかけ てきた。7歳の先は大人の事情は理解でき ないものの、家の中の雰囲気が良くない ことは感じ取っていた。大丈夫だよ。一時 的なものだから。弘樹はそう答えたが、 リナの表情は晴れなかった。でもこのまま じゃ私たちの生活はどうなるのをさの教育 費もあるしの現実的な心配はひ樹の心を さらに重くした。数週間後、ひ樹の恐れて いたことが現実になった。弘樹君、申し訳 ないが君にはもう少し違う環境で力を発揮 してもらった方が良いと思う。部長の言葉 は事実上の解雇通告だった。建前上は円満 代謝ということになったが、弘樹には次の 仕事の当てもなかった。家に帰ってひ樹は 何事情を説明した。え、どういうことを? リナの顔は青ざめた。会社をやめることに なった。でも必ず次を見つけるから。次 っていつ?分からない。でもきっとひ樹の 曖昧な答えにリナは怒りを爆発させた。 分からないって何を?私たちの生活はどう なるのを?先の将来はどうするのを? とりあえず失業保険もあるし貯金も少しは 貯金なんてすぐになくなるじゃない。どう してこんなことになったのよ。リナの 攻める声がひ樹の心を深く傷つけた。その 夜弘樹は先を寝かしつけながら考えた。 これからどうすればいいのだろうか。転職 市場は厳しく、特に30代半ばの男性に とっては簡単ではない。翌日から弘樹は 必死に転職活動を始めた。しかし思うよう には進まなかった。面接に行っても良い 返事はもらえない。一方リナの実家との 関係はさらに密接になっていた。皆は頻繁 に実家に帰るようになり、時には先も一緒 に止まっていくことが多くなった。 しばらく実家にいようかと思う。ある日、 リナがそう切り出した。ええ、だってこの ままじゃ不安だもの。あなたがちゃんと 仕事を見つけるまで弘樹は言葉を失った。 さはどうするんだ?さも一緒よ。お父さん お母さんもそれがいいって言ってくれて いるし。ひ樹の心は崩れそうになった。 家族が離れ離れになってしまう。待って くれ。もう少し時間をくれればいつまでえ ?リナの質問にひ樹は答えられなかった。 結局リナと先は実家に帰ってしまった。 弘樹は1人でアパートに残された。 静まり返った部屋でひ樹は自分の人生を 振り返った。いつからこんなに歯車が狂い 始めたのだろうか。ふと母親の父さ子の ことが頭に浮かんだ。最近連絡を取ってい ない。いや、意図的に避けていたのかも しれない。仕事がうまくいかなくなって から母親に心配をかけたくなくて距離を 置いていた。しかし今の状況では誰かに話 を聞いてもらいたかった。プライドが邪魔 をしていたが、もうそんなことを言って いる場合ではなかった。弘樹は思い気持ち で母親に電話をかけた。千さ子が充実した 新生活を送っていたある日の夜、久しぶり に弘樹から電話がかかってきた。お母さん 、今時間ある?う。ひ樹の声は疲れきって いた。ちさ子は心配になったが冷静に答え た。はい、大丈夫よ。どうしたのを?実は 相談したいことがあるんだ。あって話せ ないかな。ちさ子は一瞬間った。半年以上 ほとんど連絡を取っていなかった息子から の突然の連絡だった。分かったわ。明日家 においで。ありがとう。ひ樹の声には安と 同時に複雑な感情が混じっていた。翌日の 後もひ樹は母親の家を訪れた。玄関で迎え た千さ子は息子の変わりように驚いた。方 はこけ、目の下に枠魔間ができていた。 以前の地震に満ちた表情はどこにも 見当たらなかった。お疲れ様。輪があって 千さ子は息子を今に通した。弘樹は 慣れ下しんだ家の中を見回しながら何か 言いたそうにしていたが、なかなか口を 開かなかった。しさ子はいつものようにお 茶を入れて息子の前に置いた。この 何気ない動作がひ樹の心を少し落ち着かせ た。お母さん、実は弘樹は思い口を開いた 。会社をやめることになったこと、リナと の関係がうまくいかなくなったこと。今は 1人でアパートにいることなど全てを話し た。千さ子は黙って聞いていた。息子の話 を遮切ることなくただ静かに耳を傾けた。 それでこれからどうしようかと思ってひ樹 が話しを得ると思い沈黙が流れた。ちさ子 は立ち上がり台所に向かった。しばらくし て手作りのおにぎりと味噌汁を持ってきた 。まずお腹に何か入れなさい。痩せて しまって弘樹は母親の優しさに涙が出走に なった。お母さん、俺どうしたらいいん だろう?食事を終えたひ樹がついに本音 をした。ちさ子は息子の顔をじっと見つめ てから静かに口を開いた。ひ樹、あなたは もう35歳の大人よね。うん。それなら 自分の人生は自分で決めるものでしょう。 ちさ子の言葉はひ樹が期待していたものと は違っていた。でもお母さん、俺は猛どし ていいかわからないんだ。分からないのは 辛いわね。ちさ子は息子に同場していたが 、同時に一戦を引いていた。お母さん助け てくれないの?弘樹の声には子供のような 甘えが混じっていた。ちさ子は深く息を 吸ってから答えた。ひ樹、お母さんは あなたを愛している。それは変わらない。 でもお母さんはあなたの人生を代わりに 生きることはできないし、するべきでも ない。弘樹は困惑した表情を見せた。どう いう意味?あなたにはあなたの家族がいる 。さっきという子供もいる。お母さんは もうあなたの1番大切な人ではないのよ。 ちさ子の言葉は優しいがっことしていた。 でも困った時は家族が助け合うものじゃ。 そうね。でも今のあなたが1番大切にする べき家族はリナちゃんとさきちゃん でしょう。弘樹は何も言えなくなった。 ちさ子は続けた。お母さんにもお母さんの 人生があるの。この半年間お母さんはそれ を学んだのよ。お母さんの人生。はい。 新しい友達もできたし、楽しいことも たくさん見つけた。もう誰かの人生の脇役 でいるつもりはないの?弘樹は母親の変化 に気づいた。確かに以前より生き生きとし て見えるお母さんが変わったんだね。そう かもしれないわね。でもこれが本当の お母さんかもしれない。せこは微えんだ。 じゃあ俺はどうすれば?それはあなたが 決めることよ。リナちゃんとよく話し合っ て2人で解決策を見つけるの。ふさき ちゃんのために弘樹は長い間黙っていた。 母親の言葉を消化しようとしていた。 分かった。ようやくひ樹が口を開いた。 お母さんの言う通りだ。これが甘えていた 。千さ子は頷いた。甘えるのは悪いこと じゃない。でも甘える相手を間違えては いけないわ。ひ樹は立ち上がった。 お母さんありがとう。久しぶりに頭が すっきりした。千さ子も立ち上がり、台所 で包んでおいた手作りの相材を広気に渡し た。これ持って帰りなさい。ちゃんと食べ て体調を整えて。ありがとう。弘樹は母親 から相材を受け取った。玄関で靴を履き ながら弘樹は振り返った。お母さん、俺 これまでお母さんに甘えすぎていたかも しれない。リナにもお母さんに対して良く ない態度を取らせてしまった。ちさ子は 息子の言葉を聞いて少し安度した。気づい てくれてよかった。今度は俺が家族を守る 番だね。そうよ。あなたならできるわ。 ちさ子は息子を見送った。ひ樹の後ろ姿は 来た時よりもしっかりとして見えた。に 戻った千さ子は今で1人お茶を飲んだ。 今日の出来事を振り返りながら自分の決断 が正しかったかを考えた。息子を突き離し たのではない。むしろ本当の愛情を示した のだとちさ子は信じていた。いつまでも 母親に依存していては弘樹は真の大人に なれない。その夜さ子は日記に描いた。 今日ひ樹が久しぶりに来た。困った状況に あるようだったが甘やかすのではなく自立 を促した。辛い選択だったがこれが息子の ためになると信じている。私にも私の人生 がある。それを大切にしながら息子を 見守っていこう。翌習のウォーキング クラブでちさ子はよえさんに今回のことを 話した。難しい判断でしたね。よしえさん は千さ子の話を聞いて深く頷いた。でも 正しい選択だったと思います。親がいつ までも子供の問題を解決してあげていては 子供が成長できませんからね。そうですね 。でもやはり心配は残ります。それが親心 というものでしょう。でも信じて見守る ことも愛情の形ですよ。よしえさんの言葉 にちさ子は慰められた。その日の配食 ボランティアでちさ子はいつもより明るい 笑顔で活動に参加した。特許老人の田村 さんが言った。ちさ子さん、今日は特に 元気そうですね。そうですか。最近色々な ことがありまして少し大人になったような 気がするんです。72歳で大人になる なんて素晴らしいじゃないですか。田村 さんの冗談にちさ子は心から笑った。年齢 に関係なく人は成長し続けることができる 。千さ子はそれを実感していた。数ヶ月後 、弘樹から時々連絡が来るようになった。 新しい仕事を見つけ、リナとも関係を修復 しつつあるという報告だった。お母さんの 言葉で目が覚めた。弘樹はそう言って感謝 してくれた。今度3人でお母さんに会いに 行ってもいい?でもお母さんの予定を優先 させてもらうよ。ひきの言葉にちさ子は 微えんだ。息子が本当の意味で大人になっ たことを感じた。もちろんよ。でもその前 に連絡をちょうだい。最近忙しくしている から。分かった。お母さんも自分の人生を 楽しんでいるんだね。そうよ。あなたたち も自分たちの人生を大切にしなさい。電話 を切った後、ちさ子は窓の外を見た。春の 花が先始めている。新しい季節の始まり だった。ちさ子の新しい人生もまだ始まっ たばかりだった。ウォーキングクラブの 仲間たち配食ボランティアでの充実感。 そして何より自分自身を大切にすることの 喜び。これからも自分の人生を歩んで いこう。千さ子は心に誓った。息子や孫を 愛することと自分を大切にすることは 決して矛盾しない。むしろ自分が幸せで いることが家族にとっても良いことなのだ と。ちさ子は学んだのだった。夕日が部屋 に差し込みさ子の顔を優しく照らした。 その表情は半年前とは全く違っていた。と した石と穏やかな幸福感に満ちていた。 千さ子は立ち上がり、明日の準備を始めた 。明日もまた新しい1日が始まる。自分の ための1日が。それから1年後、ちさ子は 73歳の誕生日を迎えた。ウォーキング クラブの仲間たちが小さなお祝い会を開い てくれた。ちさ子さん、この1年で本当に 変わりましたね。よしえさんが心から嬉し そうに言った。ありがとうございます。皆 さんのおかげです。ちさ子は感謝の気持ち を込めて答えた。その日の夕方ひ木一家が 訪ねてきた。以前とは違い事前に連絡をし てちさ子の都合を確認してからの訪問だっ た。おばあちゃんお誕生日おめでとう。さ が手作りのカードを渡してくれた。 ありがとうさきちゃん。しさ子は孫を 抱きしめた。久しぶりの再開だったが、 距離感は適度に保たれていた。お母さん 元気そうで本当に良かった。ひ樹が素直に 言った。お母さんにはお母さんの素敵な 人生がありますからね。リナも以前とは 違う心からの笑顔を見せてくれた。夕食を 一緒に食べながらそれぞれが近況を報告し た。ひ樹の仕事は順調でリナも家庭と自分 のやりたいことのバランスを見つけていた 。先は元気に小学校生活を楽しんでいる。 今度の日曜日みんなでピクニックに行くん だ。ひ樹が楽しそうに話した。素敵ね。 ちさ子は心から嬉しそうに答えた。以前 なら私も一緒にと言っていたかもしれない 。しかし今は家族3人の時間を大切にして 欲しいと思っていた。お母さんは明日も ウォーキングクラブリナが尋ねた。はい。 それから配食ボランティアもあります。 忙しい1日になりそう。ちさ子の充実した 様子を見て家族3人は安心したようだった 。帰りは弘樹が言った。お母さん本当に ありがとう。の時突き離してくれて 突き離したんじゃないわ。背中を押した だけよ。ちさ子は微えんだ。これからも 何かあったら相談に来てもいい?でも最終 的には自分たちで決めるから。もちろんよ 。いつでもいらっしゃい。見送った後、 ちさ子は1人で後方片付けをした。家族と の時間は楽しかったが、この静かな1人の 時間も同じように大切だった。 鏡の前でちさ子は自分の顔を見つめた。シ は増えたかもしれないが目には正規があり 表情も穏やかだった。これが本当の私なの ね。千さ子は鏡の中の自分に微笑みかけた 。人生にはいくつになっても新しい賞が 始まることがある。ちさ子の新しい賞は 72歳から始まった。遅すぎることなど何 もなかったのだった。

制作スタッフ
企画・制作

企画・脚本: 山田太郎 (Yamada Tarō)
ストーリーテラー: 田中花子 (Tanaka Hanako)
ナレーター: 佐藤明 (Satō Akira)

技術スタッフ

映像編集: 中村浩 (Nakamura Hiroshi)
音響効果: 小林玲 (Kobayashi Rei)
撮影監督: 渡辺大地 (Watanabe Daichi)

デザイン・アート

イラスト制作: 林美久 (Hayashi Miku)
グラフィックデザイン: 藤原颯太 (Fujiwara Sōta)
アニメーション: 松田結衣 (Matsuda Yui)

管理・運営

プロデューサー: 鈴木健太 (Suzuki Kenta)
ディレクター: 木村奈々 (Kimura Nana)
チャンネル運営: 高橋涼 (Takahashi Ryō)

サポート

リサーチャー: 小川恵美 (Ogawa Emi)
翻訳: 石田健二 (Ishida Kenji)
品質管理: 森本彩香 (Morimoto Ayaka)
音楽制作: 井上拓海 (Inoue Takumi)

音声:
VOICEVOX:青山龍星

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